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毎年1月にアメリカ ユタ州のスキーリゾート、パークシティーで開催されるインディペンデント(自主制作)映画の祭典、サンダンス映画祭に出品された映画「へレディタリー」が、ホラーの常識をくつがえした最高傑作だと話題となっています。
2018年6月に全米で公開され、評論家からは21世紀最高のホラー映画だと、非常に高い評価を受けた本作品。
日本でも、間もなく公開が予定され、想像を絶する恐怖に息もできないという、この映画の魅力とはどこにあるのでしょう。
Contents
名匠を輩出することで有名なサンダンス映画祭
サンダンス映画祭と言えば、1989年に、映画監督スティーブン ソダーバーグのデビュー作、「セックスと嘘とビデオテープ」が出品されたことでも有名です。
この作品は同年のカンヌ国際映画祭で、当時若干26歳だったソダーバーグが、見事に史上最年少でパルムドール(最優秀賞)を受賞し、その後の活躍における礎を築きました。
映画「へレディタリー」は、このサンダンス映画祭でプレミア上映された直後から、批評家たちに絶賛されています。
6月8日に全米で上映が開始された後は、予想を上回る興行収入を上げ、週間ランキングでは初登場で4位に食い込むなど、配給会社A24では過去最高となっています。
すべては母の死から始まった
自宅で精巧なミニチュアを作る芸術家、グラハム家の妻アニーは、長年、精神障害による症状に苦しんでいます。
アニーは、病気のために高校生になる長男ピーターとは仲が悪く、他人と上手く話ができない、幼い娘のチャーリーに愛情を注いでいます。
そのような家族を、いつも懸命に支えている、セラピストの夫、スティーブン。
ある日、スティーブンは、アニーの母親エレンが亡くなったと知らされ、家族全員で葬儀に出席することを伝えます。
不気味な母の手紙
母親エレンとは、長らく疎遠にしていたアニー。
グラハム一家が葬儀会場に着くと、そこには大勢の葬列者がいましたが、生前の母のことをよく知らないエレンや、家族の誰にも顔見知りはおらず知らない人ばかり。
それから自宅で母親の遺品を整理しようとしたアニーは、何か手紙のようなものを発見します。
見ると、そこにはアニーたち家族へのメッセージが書かれており、その内容は、
これから、あなたたちにとても恐ろしいことが起こるけれど、その分、きっと素晴らしい見返りがあるから、というもの。
娘にも母にも秘密があった
アニーには、実は誰にも言えない秘密がありました。
それは母親のエレンが解離性同一性障害(多重人格)による発作をたびたび繰り返していたこと、父親は精神分裂病で餓死し、兄は極度の被害妄想が原因で自殺したこと。
そして、アニー自身も夢遊病の発作に苦しんでいることから、自分の精神障害は遺伝的なものであり、いずれは子供たちも発症するのではと思い悩んでいました。
しかし、母のエレンには、もっととんでもない秘密が…。
それは、エレンが、伝説に語られる地獄の王パイモンを崇拝する、悪魔的な宗教団体のリーダだったということ。
エレンが残した家族へのメッセージは、これから邪悪な宗教団体によって、世にも恐ろしい儀式が行われることを、暗示したものだったのです。
目に見えない恐怖を映像化した傑作ホラー
物語ではこの後、世にも恐ろしい不幸や怪奇現象が次々に襲いかかり、平穏な家族が精神的にも身体的にも、完全に崩壊していく様子が描かれていきます。
一見、古典的なホラー作品と何も変わらないように感じますが、そこが大きなポイント。
この映画の恐るべきところは、例えば悪霊や怨霊といった現実社会にも存在するであろう、目に見えない何かによるすさまじい恐怖を、映画という技法を使って完全に表現していることです。
恐怖はそこにあるのに 決して実体は現れない
主人公のアリーを始め、登場人物たちは、母親エレンから受け継いだ(へレディタリーとは継承するという意味)、邪悪な王パイモンの呪いによって信じがたい恐怖に見舞われます。
しかし、映画の中では、このパイモンという悪魔が果たしてどのようなものなのか、その姿は一切現れません。
それなのに観客は、そこに何者かがいることを確実に感じ取り、その不気味な恐ろしさに、息もできないほど震えおののきます。
監督と脚本を手掛けたアリ アスターによる、このかつて類を見ない素晴らしいアイディアが、本作品を、今世紀ホラー史上最高の傑作と言わしめたゆえんでしょう。
まとめ
映画「へレディタリー」の面白さは、主人公アニー役を務めた、トニ コレットの素晴らしい演技にも、注目せずにはいられません。
劇中で、恐怖に狂乱するトニの表情は、一度観たら、しばらくはトラウマになるほどの壮絶さです。
ホラーファン必見の映画「へレディタリー/継承」は、11月30日に日本公開予定です。
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